韓国が圧倒する米首都での発信力 日本はアニメ、折り紙…文化イベントばかり

とほかみえみため 010

「KEI所長のドナルド・マンズロです。本日はようこそ」

つい最近まで米国議会の下院で活躍していたベテラン政治家がわざわざ私の席にまで歩み寄ってきて挨拶をしたのにはやや驚いた。

KEIとは首都ワシントンの中心部のビルの一角にある「米韓経済研究所」である。韓国政府の資金で運営され、米国での韓国当局の「外国代理人」として米側の司法省へ届け出ている対米発信機関なのだ。

だがその定款で「韓米両国間の対話と理解を促進する」とうたうように、「米国」部分を強調し、所長には2年前まで共和党の下院議員を20年も務めたマンズロ氏を雇ったわけだ。

同氏は下院では外交委員会のアジア太平洋小委員長を務め、米韓同盟だけでなく日米同盟の強固な支持議員として知られてきた。

北朝鮮の日本人拉致をも強く糾弾し、訪米した「家族会」代表らには快く面談してきた。そんな実績の政治指導者を韓国政府は対米発信機関のトップに据えたのだ。

しかもKEIの公開行事のシンポジウム類が充実している。米韓関係や朝鮮半島の政治、安保、経済にかかわる時の主要課題を正面から取り上げるのだ。

私がマンズロ所長に歓迎された集いは日本人拉致が主題だった。今年2月、米国人ジャーナリストが出した日本人拉致事件に関するきめ細かい書籍が論題だった。

同事件の米側での商業ベースの本は初めてだから、日本側が主催した方が自然な集いだった。

その後のKEIの行事も時宜を得た重厚なテーマだった。「米韓同盟の強化策」「北朝鮮労働党大会後の金正恩体制」「下院外交委員長との対話」など、米韓双方の専門家を招き、米側の聴衆に主に情報を供するのだ。

さて日本の対米発信はどうなのか。ワシントンでの日本政府の対米公開発信機関は唯一、「日本情報文化センター(JICC)」である。日本大使館の管轄下だが、場所は市街中心部でKEIよりも広くて立派な施設を誇る。

だがその公開行事は、「アニメ映画『思い出のマーニー』」「折り紙とけん玉」「カナダ出身の落語家の紹介」「映画『地獄門』」という娯楽性の強い文化イベントばかりなのだ。

他の日本政府機関が政治や安保の対米公開発信をするのならわかるが、そんな機関はないから異様な偏重として映る。

JICCの任務は「米国の日本理解を促進し、日本側の広範な情報やイベントを提供することで日本文化をも広める」とあるように、日本の政治や安保、歴史認識や領土問題での情報や主張も米国に向けて発信する責務があるだろう。だがその発信がないのだ。

一方、KEIは韓国の国会議員や学者、そして駐米大使らを日ごろの活動に頻繁に登場させ、前述の主要テーマのなかで歴史や領土への自国の主張をも巧みに盛り込んでいく。

日本は韓国と歴史や領土という案件で対立することが多い。ともに同盟国の米国への発信は超重要であり、一方がプラスになれば他方のマイナスというゼロサムの関係さえある。

だが首都ワシントンの現状は日本が韓国に圧倒されるという感じなのである。

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