「要介護1、2の保険給付外し!?」と大騒動! 親は、家族はどうなる――介護のプロが語る

サイゾーウーマン

2019/09/22 16:00

文=坂口鈴香

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「介護保険の給付外しだ」「介護サービスが使いづらくなり、介護家庭の負担が大きくなる」「介護離職する人も増えるのでは?」「介護保険の改悪、あり得ない」――。

先日、インターネット上に、そんな声が飛び交った。厚生労働省が厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の介護保険部会を開き、2021年の「介護保険制度改正」に向け、給付と負担のあり方を見直す議論を始めたのだ。部会の検討事項の一つとして、軽度者へのサービスのあり方が挙がっており、「要介護1、2の高齢者に対する生活援助サービスを市町村に移管すること」が論点となっている。財政がひっ迫する中で、介護保険の給付費膨張にどう対応していくかが課題となっており、今年末までの取りまとめを目指しているという。

このニュースが報道されると、ネット上はヒートアップしたが、そもそも「要介護1、2の高齢者の生活援助サービス」とはどんなものなのか、また「それらを市町村の総合事業に移行する」とはどういったことなのか、よく理解した上で議論が交わされているのか、疑問に思えるコメントも多かった。

要介護1、2とはどのような状態なのか?

さて、今回の社会保障審議会の介護保険部会では、「要介護1、2の人の生活援助サービス」を市町村の総合事業に移すことが検討事項となっている。「生活援助サービス」とは、掃除や洗濯、食事づくりといった日常生活の援助をいう。

要介護度には、心身の状態に応じて要支援1・2、要介護1~5に分けられている。そもそも、要介護1、2というのはどういう状態を指すのだろうか。その目安を紹介しておこう。

要介護1

・身だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。

・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。

・歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。

・排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。

・精神・行動障害や認知機能低下がみられることがある。

要介護2

・身だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話の全般に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。

・歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とする。

・排泄や食事に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とすることがある。

・精神・行動障害や認知機能低下がみられることがある。

(「静岡市の介護保険 2019年度版」から引用)

こうした要介護1、2の人の生活援助サービスが市町村の総合事業に移行するわけだが、実は2017年には、要支援1、2の高齢者に対する「介護予防サービス」について、同様の措置が取られている。要支援と認定されると、これまでケアマネジャーがケアプランを立てていたのだが、各区市町村の地域包括支援センターが替わってケアプランを立てるように。基本的にこれまで利用していた訪問介護と通所介護(デイサービス)は同じように利用できるものの、利用料金が月ごとの定額制となった。またヘルパーの資格がなくても、ボランティアやNPO法人、民間企業などがサービスを提供することも可能になっている。

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「介護保険制度が変わったら、何が起こる?」現場の声は――

では、実際に要介護1、2の人への生活援助サービスが市町村の総合事業に移行すると、どんなことが起こるのだろうか。そして要介護者や、その家族にはどんな影響があるのか。介護現場をよく知るケアマネジャーと介護サービスを提供する事業者にお話を伺った。

「サービスの質の低下は避けられない」

ケアマネジャーMさん……首都圏の県庁所在地に勤務

認知症の方の場合、要介護1、2というのは認知症の初期症状が出ている状態。介護度が上がるにつれて抑うつ、意欲低下、徘徊、物盗られ妄想、暴言などの周辺症状がひどくなっていきます。要介護2で認知症だと、こうした症状がかなり目立つようになっていますね。認知症ではない場合、要介護2になると室内でも歩行器、屋外では車いすを使っているような状態。こうなると一人暮らしの方の場合、食事づくりや掃除などを一人ではできないので、生活援助サービスを使っている人が多いです。その際、要介護者の残存機能を生かした自立支援をしつつ、要介護者とともに家事を行うのがヘルパーの仕事。単に家事だけをしているわけではないのです。

◎認知症の悪化の可能性も?

私が担当している方に、認知症で要介護1という男性がおり、生活援助サービスとして、ヘルパーが食事づくりと掃除をしています。この生活援助サービスが市町村の総合事業に変わっても、おそらく今のヘルパーを変えることなく、サービス内容はそのままで利用し続けられると思います。でも、市の財源が不足するとヘルパーから有償ボランティアに替えるということもあり得えます。また、新たに同じ状態の方が介護サービスを利用しようとすると、最初から有償ボランティアがサービスを提供する可能性はあるでしょう。こうした有償ボランティアには、市も一定の研修を課すとは思いますが、生活援助とはいえ、認知症の方へ適切な対応をすることができなくなることは十分考えられます。資格のあるヘルパーと有償ボランティアとではスキルに差があるのは当然で、サービスの質が低下することは否めません。そうなると認知症が悪化する可能性も出てくるでしょう。

◎住んでいる「場所次第」でサービスが異なるのでは

とはいえ、今の介護保険制度でできることは多いし、サービスも手厚いのは事実。適切なサービス提供によって、外に出ることができなかった要介護2の方の状態が改善するようなケースは少なくありませんが、その一方、「お手伝いさん感覚」で生活援助サービスを利用している人もいないわけではありません。

これから団塊の世代が後期高齢者に突入すると、国の介護保険財政は一気にもたなくなるでしょう。全員が納得する制度はないのだから、持続可能な介護保険制度にするためには、今回の介護保険部会での議論も、ある程度理解はできます。ただ、市町村の総合事業に移行すると、サービスの質や量が市町村によってまちまちになるのではないでしょうか。豊かな市町村や、やる気のある地域包括支援センターなら、元気な60代をサービス提供側として活用するなど、地域性を把握してその地域に合ったサービスを展開できるかもしれませんが、うまくいかない市町村も出てくるのでは。高齢化が進む市町村ほど、事業を進めるのは大変になると思います。どんなサービスが受けられるかは住んでいる場所次第となると、それでいいのかなとは感じますね。

「要介護者の家族にも影響が出るだろう」

介護サービス事業所幹部Hさん……首都圏でグループホームやデイサービスを運営する事業所幹部

介護サービスを提供する事業者として、介護保険を将来的に持続可能なものにしないといけないという認識はあります。これからも必要な人に、介護サービスを提供していくためには、独居で重度な人へのサービスを手厚くする一方で、家族と同居している人や軽度な人にはサービスが手薄になるでしょう。

すでに、介護保険の給付抑制の流れは始まっています。介護認定でも、要介護3以上の判定は出にくくなっていて、以前なら要介護3に認定されていたような人が、今は要介護1や2としか判定されないという実感はあります。介護を提供する側からいうと、軽度の方に対して、「ゼロの状態をプラスに変える」ような介護はできなくなり、重度の人の「マイナス状態をゼロにする」ので精一杯になりつつあるのです。「これで良いんだろうか?」という思いはありますが、今後そうしたサービスしか提供できなくなるのだと、我々も意識を変えないといけなくなるでしょう。

◎介護離職につながる――家族への影響は大きい?

介護保険のコストを下げると、サービスを提供する時間や回数が減らされるでしょう。今もすでに減っていますが、さらに減るのは間違いないし、要介護1、2の人が使えないサービスも出てくると思います。それは、働き手の報酬にも影響してきます。新しく要介護1、2になった人は「そんなものだ」と受け入れることができても、すでにサービスを利用していた人は、これまで通りのサービスは受けられなくなる。そしてその水準は、市町村次第ということになります。

要介護者の家族にも、大きく影響してくると思います。例えば、家族が同居していると、どうしても家族ができないと判断された場合を除き、生活援助サービスは受けられなくなるか、サービスが減るでしょう。要介護1だと、「基本的ADL(日常生活動作・起居動作、移乗、移動、食事、更衣、排せつ、入浴、整容など)」よりも高次の日常生活動作「手段的ADL」が低下している人……例えば「歩くことはできるが、買い物や食事づくり、掃除はできない」という人は、これまでヘルパーにそれらの生活援助サービスを提供してもらっていたのが、違う形でのサポートを受けることになります。近くに家族がいれば家族がやるとか、民間のサービスを利用するなどの選択肢も検討しなければならなくなるでしょう。

さらに、これまでヘルパーは生活援助サービスを提供しつつ、プロの目で要介護者を観察して、重度化を遅らせるようなサポートをするという役割も果たしていました。プロに替わって家族が要介護者を見る目を養わないと、気がつかないうちに重度化しているということも起こります。親と関わっている人から情報を集める力も必要になるでしょう。また、ヘルパーが来ることでコミュニケーションが活性化するというメリットもありましたが、これを家族が埋めなければなりません。いずれにしても家族の関与を増やさないと、要介護1、2の人の状態は低下しますし、家族の介護離職につながるケースも出てくるのではないかと危惧しています。

◎要介護者に向けた怪しげなサービス増加?

加えて、民間サービスに移行する傾向が強まると、要介護者に向けた怪しげなサービスが増加することも考えられます。すでに、「自費でできるマンツーマンのリハビリをやりませんか」とか、「介護保険では限界があってできないプラスαの部分を請け負います」というビジネスも出てきています。高齢者がよくわからないまま契約させられるケースも増えるでしょうし、家族はそうしたことから親を守る必要も出てきます。

要介護1、2の人は、要支援・要介護者の約4割を占めています。今回の議論は、そこに団塊の世代が入ってくる前に何とかしたいという国の意向があるのは明らかです。この流れは加速することはあっても、戻ることはもとより止まることはないでしょう。

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それでも介護保険にかかる財源はひっ迫――いま重要なことは?

お二人の意見を聞いて、どう思われただろうか。正直に言うと筆者は、サービスを提供するのが市町村になっても、軽度者の生活援助サービス程度ならさほど大きな不都合はないのではないかと考えていた。生活援助サービスが提供される場面を何度も取材してきたが、ヘルパーの丁寧な仕事ぶりに感心すると同時に、我が家よりも丁寧な掃除や調理、銘柄まで指定される買い物といったサービスが自己負担数百円でできることに疑問を感じたのも事実だ。ネットスーパーを利用するなど、サービスを合理化することはいくらでもできるのではないかとも思った。

しかし、お二人の意見を聞くと問題はそう簡単なことではなかったようだ。介護保険制度は思ったよりも有効で、お二人に代表されるようなプロによって、世界に誇れるほどレベルの高いサービスが提供されている。志の高いプロが支えていることに、介護サービスを斜めから見ていた自分を恥じた。

それでも、介護保険制度を持続可能なものにするためには、ある程度の痛みはあってしかるべきだとも感じている。少子超高齢化社会が進む中、介護保険にかかる財源はひっ迫している。今の手厚い介護サービスのままでは、これから先、若い世代にしわ寄せがいくのは目に見えているのだ。少子化でサービスの担い手も不足しているし、人手不足はますます深刻になるだろう。今回話を聞いたお二人も、この点については同様の考えだった。

ただ本当に必要な人に、必要なサービスが提供されなくなっては、そもそも何のための介護保険制度なのか、ということにもなりかねない。いずれ、誰もが老いて、人の手を借りなければ生活できなくなるのだ。介護保険改悪反対を声高に叫ぶばかりでなく、先を見据えて冷静に議論することが大切なのではないだろうか。 (坂口鈴香)

最終更新:2019/09/22 16:00

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