中居正広がジャニーズ事務所を退所した理由について、ビジネス評論家の山田修氏が分析する。
SMAPの元メンバー中居正広が、ジャニーズ事務所を3月末で退所すると発表した。SMAPが解散したのは2016年12月末のこと。中居は木村拓哉と共にジャニーズ事務所残留の道を選び、これまで活動している。解散から3年が過ぎてからの退所。「なぜ今?」という疑問に対して、「ビジネスパーソンが会社(組織)を離れていく3大理由」を当てはめると、見えてくるものがある。中でも、やはりジャニー喜多川氏の逝去が最終的な決断となったのだろう。
「ジャニーズ事務所の中居」として可能性への疑問
「ビジネスパーソンが会社(組織)を離れていく3大理由」というのがある。「人間関係」「やりがいと自己実現」、そして「報酬と待遇」である。
最初の「人間関係」であるが、これには2つの側面がある。まず、「どうしても我慢できないヤツがいる」という負の人間関係。これが発生してしまうと、ほかの「2つの理由」の状況がどうであれ、その組織を飛び出してしまおうというように心が動く。別の側面は「あの人がいるから頑張る、死んでもいい」というほどの密接な人間関係だ。しかし、これは逆にそれほどの存在を喪失してしまうと、「それならもうここにいなくてもいい」といった思考が働く。中居にとって、ジャニー喜多川氏の逝去がまさにこれに当たると、筆者は考える。
また、ジャニーズ事務所内での「やりがいと自己実現」という点ではどうだったか。中居はもう十分成功しているタレントである。しかし、やりがいや自己実現というのは「今の状態からさらにどう進むか」で満足感が得られる。
ジャニーズ事務所では、ジャニー喜多川氏の死後、滝沢秀明氏が取締役副社長に新任した。メイン・ビジネスである公演のプロデュースには、ジャニーズは一線で活躍中のタレントに、この分野の人材が豊富だ。滝沢氏のほかにも、昨年の夏からKinKi Kids・堂本光一氏、嵐・松本潤氏、山下智久氏らが後輩のコンサートや楽曲のプロデュースを行っている。中居はと言うと、SMAPデビュー当初からコンサートの構成・演出を任されていたが、08年の全国ツアーから、香取にその役割が代わってしまった。
周知の通り、MCとしてバラエティを主戦場とする中居が、ジャニーズ事務所の中で例えば「バラエティ担当プロデューサー」という幹部職が用意されることがあるのか? あるいはそれに就いたとしても、この組織の中では傍流的なポジションにならないか? そのように中居は考え、「この事務所にいても、自分のさらなる未来はあまりない」と思ったかもしれないと、私は推測している。
「ビジネスパーソンが会社(組織)を離れていく3大理由」の最後、「報酬と待遇」である。普通のビジネスパーソンにとっては大きな要素だが、中居にとっては相対的に「どうでもいい」ことだと思われる。
というのも、中居は芸能人の中でも相当な資産家だとされているからだ。「資産200億円以上」という未確認報道はさておき、17年4月放送の『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)の中で、“7億円超えのマンション”が話題になり、中居はこれを「買えない」とはっきり言わなかった。一方で、20年1月には自身のラジオで「月の食費は5万円」と明かし、40代独身男の堅実な生活ぶりもうかがわせた。「とにかく金が減らない」とも発言している。
恩人だったジャニー氏はいなくなったし、事務所では将来も幹部になれる見込みはあまりない。そう考えると、事務所に差し引かれているギャラが馬鹿らしくなりはしないか。「金持ちほどケチだ」というではないか。
ジャニーズ事務所のような大手芸能事務所に所属する大物タレントの報酬は、多くが「月額固定給」と「ギャラの歩合支払い」の組み合わせと見られている。現在、中居がレギュラー出演しているテレビ番組は、いずれも自身がメインの司会者を務めている。番組制作のメイン出演者へのギャラは相当額になるとされるが、これらは独立すれば、自分の個人事務所が受領することが可能となる。ジャニーズ事務所からの現在の俸給とのバランスシートはどのように変わるのだろうか。
今回の独立表明に当たり、中居には以上のようにいろいろな感懐、思惑、判断、金銭計算があったことだろう。これだけ広く愛されているタレントが、今後どのように翼を広げていくのだろうか。ファンと共に見守りたい。
■山田修(やまだ・おさむ)
経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり、外資4社および日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績を全て回復させ「企業再生経営者」と評される。