支配できなかった。それでも勝った
三ツ沢の夜空に勝利の雄叫びが轟いた。7日、横浜F・マリノスがYBCルヴァンカップのFC東京戦で今季の公式戦初の勝ち点3を獲得。ホーム開幕戦に集まったファン・サポーターが歓喜に沸いた。重要な「1勝」を手にできた要因は、新監督の目指すスタイルだけでなく、サッカーの原点とも言える部分だったのかもしれない。(取材・文:舩木渉)
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ようやく勝った。この1つの勝利が、今後大きな意味を持ってくるかもしれない。
横浜F・マリノスは7日、YBCルヴァンカップのグループリーグ第1節でFC東京と対戦。序盤にイッペイ・シノヅカが決めたゴールを死守し、1-0で今季公式戦初勝利を掴み取った。
勝ちを拾えていなかったJ1リーグ戦のセレッソ大阪戦や、柏レイソル戦とは様相が違った。これまでは試合開始からパスワークで相手を押さえ込んでいたが、7日のFC東京戦はボールがゴールとゴールの間を行ったり来たりする展開となる。
直近のリーグ戦から先発メンバーの約半数を入れ替えた影響もあったのか、特に前半はビルドアップでイージーミスが目立った。開始30秒でクロスバー直撃のシュートまで持ち込まれた場面も、安易なバックパスを攫われたことからピンチにつながった。
簡単なパスミスからカウンターを食らってゴール前まで迫られるピンチを招き、逆に相手の精度不足もあってボールを奪えればマリノスもすぐカウンターで相手ゴール前まで侵攻する。日頃の練習ではパス回しのスピードを上げるために「テンポ!」と指示が飛ぶが、FC東京戦は別の意味で「テンポ」が上がり続けた。
試合後、アンジェ・ポステコグルー監督は記者会見の中で「なかなか自分たちの思うようにコントロールする時間帯が少ない試合だと感じた」と初勝利までの90分間を総括した。勝ちはしたものの、指揮官が意図したような相手を圧倒するゲームでなかったことは確かだろう。
一方、DF栗原勇蔵の負傷交代によって前半開始早々からキャプテンマークを巻いたGK飯倉大樹も「すごくジタバタして、本当にクオリティという部分ではすごく課題が残るゲームだった」と振り返る。
それでも「勢いがあり、今年に入ってJリーグに出ていない選手が数人出て『やってやるぞ』という雰囲気があり、ここ(ホーム)で負けられないというところで、みんな頑張ってくれて、体を張った結果が1-0というスコアになった」と、新体制での「1勝目」そのものの価値を感じている。
「1人ひとりがもっともっとスペースを見つけて、テクニックの質を上げていけばチャンスになった場面はいっぱいあるけれども、何よりまず勝つということ。今年初めて勝つ、こういう公式戦で勝つのはすごく大事なことだし、1-0で最後もジタバタしたけどその中でもつなごうという意識もあった。そういう意識面のところでは、セレッソ戦からの反省を踏まえて、1-0でそのまま勝てたというのは良かった」
取り戻した原点。泥臭く、貪欲に
この日と同じように序盤に先制しながら、終盤にミス絡みで失点を喫して勝ち点1の獲得にとどまった先月25日のセレッソ戦。そこで出た「勝っている終盤のゲームコントロール」の課題を意識しながら、攻める姿勢も忘れず戦うことができた。
そして今月2日、敗れた柏レイソル戦では「アタッキングサードでの質」が問われた。前線の選手たちの積極性、パスをつなぐだけでなくゴールに向かう貪欲さは、FC東京戦で改善が見られた。シュート数はFC東京の9本を大きく上回る「16本」。
4分の先制点の場面も、左サイドから切り込んだFW遠藤渓太が遠めから思い切り右足を振り抜いたミドルシュートがきっかけとなった。こぼれ球を信じてリスクを冒し、逆サイドからもFWイッペイ・シノヅカが詰めていたからこそのゴールだった。
飯倉は語る。
「目指すスタイルは圧倒して勝つことだけれども、やっぱり1対1の部分だったり、誰かがデュエルのところで勝てなかった場合に他の選手がカバーしたり、そういう泥臭く戦っていくことも必要。本当のベストはすごく綺麗にバルサみたいなサッカーをしたいんだけれども、それは今のこのレベルでは難しいから、それに近づけるように、ドタバタしながらでもゲームをコントロールしていければいいのかなと思います」
マリノスが初勝利で得たものは勝ち点3だけではなかった。ポステコグルー監督が追い求めるスタイルにこだわるあまり、疎かになりがちだったサッカーの原点。勝利を目指して貪欲に、泥臭く「戦う」姿勢が最も欲していた結果につながった。
(取材・文:舩木渉)