外国人観光客の人気が高まっている木曽エリアのトレッキング=木曽おんたけ観光局提供
日本における成長する都市 五つのパターン(週刊朝日 2018年5月18日号より)
交通が発達すると、地方の活力は大都市に奪われてしまうストロー現象で地方の人口が都会に流出するのが一般的だ。しかし経営コンサルタントとして2001年から約30市町村の地方創生に携わってきた「ノウハウバンク」の三科公孝さんによると、人口が伸び続ける市があるらしい。
「宇都宮市と小山市です」
いずれも栃木県だが、両市に共通する強みは、東北新幹線(1982年開業)で東京へ通えること。JR東京駅からJR小山駅は約43分、JR宇都宮駅は約50分。どちらもこの「利便性」を前面に打ち出し、魅力的なまちづくりを進めてきた。
宇都宮市には大規模な工業団地があり、車に乗ればすぐ豊かな自然を実感できる。市内の東西を結ぶ新型路面電車の整備を進め、昨年4月に設置した移住・定住相談窓口には、「親戚が住んでいる」「イベントで訪れたことがある」など、市にゆかりのある人からの問い合わせが多数寄せられているという。
小山市も工業団地の保有や造成で企業誘致を進め、保育園や学童保育施設の増設などの子育て支援も手厚い。三科さんは市民農園にも注目している。道の駅思川に隣接する農地には、20平方メートルの貸し農園が192区画、約500平方メートルの体験農園が2区画、1350平方メートルの体験水田まである。8年目を迎えるが、貸し農園192区画も、種まきや収穫を年2回行う体験農園も満員。三科さんは、週末に土に触れるライフスタイルに憧れる人たちが移住している、と見る。「都会としての機能は東京に任せ、地元に田舎のよさを残す地域は、都市として伸びます」(三科さん)
成長の種となる「オンリーワン」を見つけ、正しく育てれば、「伸びるまち」になりうる。種は十人十色ならぬ十町十色なわけだが、では「伸びないまち」に陥ってしまう要因は?
三科さんは「危機意識がない町はだめですね」と答える。熊本市が「九州新幹線の通過点になる」という危機感のもと画策して成功した例に対し、「行政同士、行政と民間、じいちゃんとばあちゃん(住民同士)……。どんな人たちでもいいので、『このままじゃこの町、消えるよね』という危機意識を持たないと危ない」と話す。
津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
「サイトブロッキング」の問題点を指摘(※写真はイメージ)
ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。今回は政府が決定した「サイトブロッキング」の問題点を指摘する。
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政府の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議で4月13日に決定された、マンガやアニメなどの著作権を侵害する海賊版3サイトへの「緊急対策」が波紋を広げている。国内のインターネット接続事業者(ISP)に、特定のウェブサイトへのアクセスを遮断するサイトブロッキング(接続遮断)を求めたからだ。
ISPが遮断措置を行うには海賊版のサイト利用者だけでなく、一般の人たちがどんなサイトにアクセスしているのかといったユーザー情報を取得し、使う必要がある。しかしこの情報は、憲法21条で保障された「通信の秘密」に該当し、通信をつなぐ以外の目的で使うことは、電気通信事業法でも禁止されている。
通信の秘密を侵害することになれば、ISPが政府の要請に応えてブロッキングを行うことは犯罪になりかねない。そのため政府は、今回の緊急対策で以下の三つの方向性を示した。(1)次期通常国会を目指してブロッキングの法的根拠となる制度を整備する(2)それまでのブロッキングは刑法37条の「緊急避難」によって、違法性が阻却されるとの解釈を示す(3)これを受けてISPと出版社などの権利者ら民間の対応を進めるタスクフォースを作る。
政府としては、ISPの「忖度(そんたく)」による自主的なブロッキングを期待しているのだろうが、行政府が「違法ではない」と独自の解釈を示したところで、実際に司法がそのように判断するとは限らない。
では、ISPは違法行為に問われるリスクを冒してまでブロッキングに踏み切るのか。ISPの業界団体「日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)」は、政府方針に真っ向から反発。法的根拠のないブロッキングは「断じて許されない」として、政府の方針には従わない姿勢を鮮明にしている。