Photo by Keisuke Yasuda
15才で起業した会社を19歳で売却、その資金を元手に23歳にして年商35億円の企業を築き上げた男、正田圭。彼は「連続起業家」を名乗り、「会社をつくって売却することは、世の中に数ある儲け話のなかで一番確実でシンプルな方法だ」と語る。就職でも自営でもない、売却を前提とした連続起業家という新しい生き方と、今、議論になっている「働き方」について聞いた。(取材・文:谷直美+YOSCA宮嵜幸志、企画編集:武田鼎+FIREBUG)
「金持ちになるには
社長になるしかない」
──15歳で起業するとは、なんとも早熟な中学生だったんですね。
ごく普通のサラリーマン家庭で育ちましたが、中学受験をしてお金持ちの子息が多く在籍する私立の中高一貫校に進学しました。その環境の中で、お金のないつらさを露骨に感じさせられることが多かったんです。
クラスを見渡すと、裕福な友達の親はほとんど社長だということに気づき、お金持ちになるには会社経営しかないと思うようになりました。
──起業というものに対して、ハードルの高さは感じなかったのでしょうか。
経営者一家の友人の親と親しかったことが幸いしました。経営者はお金やビジネスに対してオープンな意識を持つため、自分の子どもにも株を買うことを勧めたり、商談の場に同伴させるなどの機会を与えようとしたりする人が多いんです。起業について難しく考える必要はないと教えてくれたのは、友人の親たちでした。分からないことは何でも彼らに質問していましたね。
──10代で最初の会社を売却して以降について聞かせてください。
10代でまとまった資金を持つ人が世の中に少なかったこともあり、自分と近い世代の起業家に出資する「投資家」としての活動が徐々に増えていきました。ゼロからモノを生み出すよりも、傾いている事業を買ってテコ入れしたり、仲良くなった社長と共同で起業・経営したりした方が、成功率も高く効率的だからです。「起業家」と「投資家」という二つの立場を並行させながらビジネス展開しています。
「働く=雇われる」との意識から
抜け出すことが肝要だ
──とはいえ、人材の流動性が低く、起業が身近でない日本では、まずは就職して社会人の経験を積むのが一般的で、いきなり起業は難しいという感覚が根強いと思います。
自分自身、若くして起業したことで苦労したので、以前は会社員として経験を積んだ後に起業する方がいいと思っていましたが、今は違う考えです。きっかけは、自社でインターンを受け入れたこと。熱意を持って入って来たはずの学生たちが、全員2~3ヵ月で辞めていきました。
私にとって、仕事とは自分で創意工夫してやるもの。ところが、彼らは手取り足取り育ててもらえるものと期待していた。そのギャップが大きかったんですね。こうした経験を通じて、「成功したいから雇ってください」という発想そのものが間違っているのではないかと思うようになりました。
──いわゆる「雇われ癖」ですね。その弊害とはどのようなものでしょうか。
雇用されていると、お金に対する当事者意識を持ちにくいんです。日本では「働く=雇われる」という意識がまだまだ根強いですが、そこから抜け出せなくなってしまう。雇用されること自体を否定しているわけではないのですが、将来的なことも考えて、その人にとって原体験となる初めての労働体験は、雇われるという形ではない方がいいと感じます。
ただ、いきなり起業しろというわけではなく、学生時代に服を仕入れて自分で売って小遣い稼ぎをしたという程度でもいい。自分なりの金銭感覚を持ってから、一つの手段として雇用されることを勧めます。
──ご自身の著書でも提唱する『サクッと起業してサクッと売却する』は、これまでの「起業のススメ」的なものとどこが違うのでしょうか。
「売却をあらかじめ念頭において起業する」という点が違います。売るために起業するなんて本末転倒だとか、責任感がないなどと思う人がいるかもしれませんが、誤解を恐れずに言うと、やりたいことの前にまずはお金だと思います。私にとってのクオリティー・オブ・ライフはお金です。お金を手にすることで、何をするにせよ可能性や選択肢が広がるのです。
──少しイメージしにくいのですが、「会社を売却する」とはどういう行為なのでしょうか。
会社を売るとは、その会社が今後生むと予測される利益を現在の価値に換算して、株を換金すること。つまり、この先、会社経営をする中で得られるであろう利益を先取りして、お金と時間の両方を「今」の時点で手にすることができる手段なんです。
時給で働くと、労働時間と引き換えに賃金が手に入ります。それが一般的なお金を手にする方法ですが、時間を売らなくてもお金を手にできる方法があるということを、もっと知ってもらいたいですね。
そもそも、株も株式会社も「売買」を前提とした制度なのです。日本では、会社売却に対するネガティブなイメージが今なお根強く残っていますが、不思議に思います。
数億円レベルの会社の起業なら
県大会ベスト16の実力で十分
──そうは言っても、起業は難しいものだと考える人が大半だと思います。
起業は誰にでもできます。もちろん誰もがビル・ゲイツになれるわけではありませんが、仮にビル・ゲイツが野球でいう「メジャーリーグ」の実力だとしても、数億円レベルの会社を起業して売却することは、「高校野球の県大会ベスト16」くらいの実力でできます。つまり、努力次第でやれないことはないレベルです。
売却で得られる数億円が手に入れば、その後の人生のクオリティは大きく変わってきます。そのために何が必要かというと、小さくても構わないのでまずビジネスを始めてみることです。
──しかし、何で起業すべきかが分からず、そこで二の足を踏む人もいると思います。正田さんの場合、起業する際の決め手は何ですか。
起業を足踏みしてしまう理由として、最も多いのが「アイデアがない」ということだと思います。でも、実は起業にアイデアなんて必要ないんです。その代わりに必要なのが「情報」です。
一からビジネスを考えるのでなく
成功している人の真似から入れ
まず、儲かっている商売、成功している人の「真似」から入ってみること。間違っても、自分で気の利いたアイデアを思いつこうとしないでください。起業経験のない人が、儲かるビジネスのアイデアを思いつくのは非常に困難ですから。
話題になっているカテゴリーのサービスを調べてみて、例えば「パーソナルトレーニングジム」の需要が高いと感じたら、そのカテゴリーで売り上げがいい会社のサービスがなぜ人気なのかを徹底的に調べて行動に移せばいい。
やったこともない事業の計画をやみくもに練るのではなく、似たモデルケースの事業から始めることが成功のコツです。スポーツであれ何であれ、身近でうまくいっている人やロールモデルの真似をしながら上達していくというのは普通の話ですよね。
でも、もしどうしてもビジネスモデルを思いつかなければ、買ってきてしまうのも一つの選択肢です。私は、ビジネスを自分で思いつくセンスがあまりないので、企業を買収して事業をスタートすることがほとんどです。
今手掛けているWebメディア「pedia」という事業も、自分でゼロから立ち上げたものではなく、2017年11月に買ってきたものです。当時、未公開企業を中心とする株式市場の情報や、資金調達や企業決算、適時開示に関わる情報などを知ることができるデータベースが欲しかったのですが、ゼロから集めるのは時間やリソースがかかりすぎました。そこで、当時、ベンチャー企業の経済ニュースメディアを運営していた「pedia」を買ったのです。
pediaはもともと老舗ベンチャーキャピタルが立ち上げたメディアということもあり、pediaを買うことで、ブランドイメージと企業データベースをいっぺんに手に入れることができました。
会社というものは、このように買ったり売ったりして大きくしていく性質のものですから、自分で作った事業の売り時を見極めたり、何かしらの事情で安く売られている企業があれば買ったりといった判断をしていくことが大切なんです。
起業家になりたい人をサポートし
「連続起業」の価値を広めたい
──連続起業家を目指す人のためのオンラインサロン「pedia salon」を立ち上げられていますが、連続起業家を増やしたいという思いがあるのでしょうか。
そうですね。これからの社会の動きを考えたとき、「雇用される」ことに対する価値は今後ますます下がっていくと思います。未来を生きる若い人たちに、それを知ってほしい。このサロンは「連続起業家を目指す人」「会社を売却したい人」「自社の売却益を投資して資産運用したい人」のための交流の場であり、各自のフェーズに応じたスキルを体験型で習得できるコミュニティです。起業家と投資家のマッチングもテーマの一つですね。
──どのような人たちが参加していますか?
1980年~2000年生まれの、いわゆる「ミレニアル世代」がほぼ全員を占めます。世界的に見ても、史上最大のお金持ち世代といわれるミレニアル世代は、ハイリスクハイリターンを好み、短期間でお金を稼ぎ出すことが得意。彼らにとって、連続起業家のライフスタイルは相性がいいと思います。
──地道にコツコツと、というある種“日本的”な価値観とは真逆な立ち位置ですね。ミレニアル世代でもある正田さんが感じる、連続起業家というライフスタイルの魅力は何でしょう。
連続起業家としての方法論を習得すれば、まとまった時間とお金が得られるので、常に働いていなければならない状態から解放されます。この不透明な時代に、会社の仕事にばかり時間を取られるのはとてもリスキーなこと。働き方を見直すことで、自由に自分のやりたいことに打ち込むことも可能になります。
お金と時間は引き換えるものではなく、どちらも創り出せるもの。年収と貯蓄額は比例せず、給料で資産を増やすことは困難です。こうした事実に向き合い、連続起業の価値に着目する人は、将来的には確実に増えていくと思いますね。
正田 圭(まさだ・けい)/TIGALA株式会社代表取締役
15歳で起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGALA株式会社を設立し代表取締役に就任。テクノロジーを用いてストラクチャードファイナンスや企業グループ内再編等の投資銀行サービスを提供することを目的とする。2017年12月より、スタートアップメディア「pedia」を運営。著書に『サクッと起業してサクッと売却する』『ファイナンスこそが最強の意思決定術である。』『ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさい。』『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(いずれもCCCメディアハウス刊)、『この時代に投資家になるということ』(2018年6月下旬発売予定・星海社新書)がある。
(記事提供:Qreator Agent)