【怖い話】なんとか見つけた宿の部屋で休んでいると深夜、板の間に誰かが正座をしていて・・

怖い話ちゃんねる

8月、お盆休みに当時高崎に住んでいた友人と連れだって、

ドライブに出かけた。

特にあてもなく、関越を水上で降りて

利根川の源流や尾瀬を抜けて日光等々、ふらふらと。

午後になり、さて宿をどうするかという段になった。

当時、月2箇所ぐらいのペースで

出張のある仕事に就いていた私は、

前日当日に宿を取るなど朝飯前と自負していた。

ガイドブック片手に携帯であちこち電話をしたが、

時期はお盆の真っ最中、しかも週末とあって、

近場の温泉宿は殆ど満室。

友人にうそぶいていた私の額に、

うっすらと汗が浮いてきた頃、

○神温泉の文字が目に入った。

当時この名前を知らなかった私は、

「ここはマイナーだろ」

と思い、とりあえず目に留まった一軒の宿に電話した。

名前は○○荘。

ホテル~や~旅館など

器の大きそうな宿にことごとく振られていたので、

この名前が真っ先に目に付いた。

電話には番頭格らしき中年男性が、

比較的丁寧な物腰で出た。

「これから2人なんですが、空いてます?」

「え~っとですね、う~ん、少々お待ち頂けますか?」

対応は微妙だった。

1分近く待たされ、

こりゃ次あたるかと電話を切ろうとした時、

「もしもし」

と、先ほどとは別の中年女性が対応に出た。

「今どちらですか、一応、手狭になりますが一部屋ご用意できますが」

「1時間ほどで着けると思います、お願いします」

日も傾きかけてきていた。

即決だった。

宿は案の定古かった。

歴史を感じさせるなどという情緒などなく、

築20~30年くらいの単なる古びた2階建ての宿だった。

2階の突き当たりにある

「ききょうの間」

という部屋に通された。

6畳間に2畳程の板間とトイレが付いた、

本当に狭い部屋だった。

おそらく、普段は従業員が使用してる部屋なのだろう。

仲居さんは、しきりに「すいません」と繰り返していた。

風呂は以外にも広く、温泉はかけ流しだった。

「だろっ」

っと、ほくそえんだ私を見て友人は

「まあまあだな」

と笑った。

朝が早かった為、夕食のビールが効く。

途中トイレにたつと、

2人の仲居さんが私を見て立ち話を中断し、

妙な愛想笑いを浮かべた。

睡魔が程よく回っていた為、さほど気にしなかった・・

一度寝たのだが友人の驚異的な大イビキで目が覚めた。

部屋の明かりは友人が消したのであろう。

さて、寝たのは何時だったのか…

ぼ~っとした頭で考えて、

さぁもう一眠りだと思うが、隣がうるさい。

「んっ?」

と思った。

右手に板間がある位置のふとんで寝ていた私は、

仕切りの障子が開いていることに気づいた。

何故か気になる。

普段ならどうでもいいことが、何故か気になる…

「閉めなきゃ、閉めなきゃ」

と何故かしきりに思っている。

体を起こそうとした瞬間、金縛りにあった。

幼少の頃から疲れたとき、

金縛りにあうことには慣れていた私は、

「またかよ」とうんざりしながらも、

少しづつ気合を入れて解く作業に転換した。

だが、いつもと違う。

頭は金縛りを早く解かねばと考えているのだが、

目を板間の方向から離せない。

それでも、指先から徐々に動くよう気合を入れる。

恐怖感よりもこの動けない苦痛が嫌いだといつもは思っているが、

この日は何故か怖い。

真夏の空調も無い部屋なのに、

体温が低下してゆくのが分かる。

どのくらい時間がたったのか、

なんとか金縛りが解けた。

浅く持ち上げていた体を、

ゆっくりとふとんに沈めた。

耳鳴りがしていたので気づかなかった

が、友人はまだ大イビキをかいている。

「うるさいな」

と寝返りをうった。

軍人がいた。

私と友人との間に軍人、

いや、正確にいうと

それらしき帽子を目深にかぶった者が正座し、

板間の方向を凝視していた。

気が付くと朝だった。

「おはようさん」

と朝風呂からサッパリした顔の友人が戻ってきた。

「イビキうるさいよ」

と軽く文句を言いつつ、

昨日のことは夢だろうと記憶を打ち消していた。

板間の古びた赤いビニールの椅子に

腰掛けようと引いたとき、ふと気づいた。

その椅子には、うっすらと埃がかかっていた。

その時思った。

この部屋は普段人の出入りが無いんだな、

何らかの理由でと。

大広間での朝食の時、

電話に出た女将らしき人がいたので、

それとなく聞こうかとも思ったが、

忙しそうなのでやめた。

というより、その時点でも

今でもあれは夢だと思っている。

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