個人差はもちろんあるが、通常、子どもは1歳を過ぎた頃に何かしらの言葉を発し始めるケースが多い。多くの親は自分の子どもが2歳まで全く言葉を発さなかったとしたら、かなり不安になるだろう。
そしてやっと話し始めた言葉、つまり母語が母国語とは全く関わりのない他言語であったとしたら、びっくりして卒倒しそうになるに違いない――。
■アラビア語圏の3歳児が英語を話し始めた
シリア、レバノン、イスラエル地方にまたがるドゥルーズ派のコミュニティに住むオニール・マームド君は現在3歳になる男の子だ。
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全米バスケットボール界のレジェンド、シャキール・オニールの名をとって名付けられたオニール君は、2歳までは一言も言葉を発しなかったという。そして、ある時、いきなり訳のわからない単語を連発し始めたのだ。
「マイディアー(my dear)」 「オーマイゴッド(oh my god)」
彼の住んでいるイスラエル北部の小さな村はアラビア語圏であり、滅多に英語が聞かれる地域ではない。
そのため両親はじめ周囲の人々も、オニール君が話している言葉が英語だと認識するまでに時間がかかったという。
言語療法士と臨床言語学者がオニール君にさまざまなテストを試みた結果、オニール君の英語レベルがネイティブの英語(しかも完璧な英国訛り)を話す家族で育った3歳児と同等のレベルという結論に達したが、その一方で、住んでいる地域のアラビア語のレベルはそれよりはるかに下回ることが判明した。
テレビ局や雑誌の取材が殺到し、オニール君は瞬く間に有名人になった。
祖父が「孫の話す言葉がわからないんだ」と語れば、両親も「誰も英語を話さないし一度も海外に出たこともなく、英語の番組だってほとんど見ないのにどうして」と困惑している様子でインタビューに答えている。
オニール君はまた「motorcycle(オートバイ)」、「rectangle(長方形)」、「waterfall(滝)」といった3歳児には複雑な単語も口にしているというから驚きである。
■超自然的な言語知識“ゼノグロッシー”なのか?
だが、母国語であるはずのアラビア語はほとんど話せないため、両親は英語教師のいる幼稚園をわざわざ探して通わせているが、このままアラビア語が話せなければ家族や友達、村の人たちとこの先どうやってコミュニケーションをとっていけるのか、非常に心配しているという。
これだけの記憶力や理解力を持ちながら、なぜ最初にアラビア語を習得しなかったのか?
当初からオニール君一家と連絡を取り、日頃から支えている現地の女性看護師イリト・ホルマンさんは、医療関係者として自分の口からは言いにくいのだが、と断りつつ、「(イスラム教系ドゥルーズ派の)教義である輪廻転生を信じずにはいられない」とコメントする。
テレビ番組に招集された専門家の中には、学んだことのない外国語を操ることができる超自然的な言語知識、およびその現象を指す“ゼノグロッシー(真性異言)” ではないか、という提言をする人まで出ているというが、科学的な根拠に乏しいため決着はまだついていないという。
奇跡だ! 天才だ! と喜ぶべきか、それとも憂えるべきか……。いずれにせよ、まだあどけない3歳のオニール君がこの先も立派に成長することを願いたい。 (文=Maria Rosa.S)
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